れんげ栽培米とは

れんげ栽培米とは、れんげを肥料として活用する有機栽培米のことです。れんげの原産は中国で、日本にいつ渡ってきたかは定かではありませんが、江戸時代の貝原益軒『大和本草』(1708)等に、稲刈り後の田んぼにれんげの種をまき、春に花が咲いた頃に刈り取って馬の飼料にしたという記述があります。これらから1700年代の初めには、田んぼの裏作に主に飼料に利用されていたことがうかがえます。

その後の記録では、江戸末期から明治、大正、昭和と水田の裏作に緑肥として利用されてきたことがわかります。昔の農家は、馬や牛、鶏などの糞や、稲わら、おがくずなどを使った堆肥、きゅう肥や、れんげによる緑肥を組み合わせて有機肥料による稲作を行っていました。近代に入ると、化学肥料が普及し、品種の改良、農薬の発達などにより安定的に収量の多い稲作を行えるようになりました。こうして、明治以降の米づくりを支えた、れんげ栽培は1960年代に入ると急激に減少していきました。

ところが、化学肥料に頼りすぎた結果、土壌に含まれる有機物やミネラルなどが減り、土の力が弱まり、生産力が減ったり、病気や天候に弱くなる、農薬の使用が多くなるなどの問題が出てきました。化学肥料や農薬の多用は、土や水を汚染し、人体にも有害となり、環境汚染の元にもなっています。

そこで今日、改めて見直されているのがれんげを緑肥にする有機栽培です。れんげなどのマメ科の植物は、根粒菌と共生することができます。根粒菌は、れんげの根っこに根粒という丸い部屋をもらって居候し、れんげが光合成によってつくったエネルギー源をもらい、その代わりに空気中のチッ素を植物が利用できる形にして渡します(チッ素固定)。れんげと根粒菌は、お互いが自分の能力を使って、相手が必要とするのにつくれないものを渡し合う、THE共生関係にあります。

ご存知のように植物を育てるときに必要な肥料の三大要素がチッ素(N)、リン酸(P)、カリ(K)です。チッ素は空気中に68%もあるのに、とても安定した形のため、植物は空気中のチッ素をそのまま取り込んで利用することができません。また、チッ素を化学肥料として工場で生産するには、高温高圧の環境下で多大なエネルギーをつかいます。ところが、根粒菌は常温で通常の圧力、すなわち自然環境下で、れんげにもらったエネルギーをつかって、空気中のチッ素を利用できる形に固定できるのです。

れんげは根粒菌が固定したチッ素を得て利用するので、チッ素肥料がなくてもよく成長します。そして、れんげの茎や葉、根、花はチッ素をはじめ、リン酸、カリ、硫黄、炭素等を多く含むため、れんげをすき込むことで、作物への優れた肥料となり、土壌への有機物の供給源にもなります。有機物は微生物によって分解され、土の力を健全に高めてくれます。

れんげを緑肥とする、れんげ栽培は、化学肥料や農薬の使用を抑え、安全安心な米を継続的につくれること、土壌を健全に保ち、微生物や虫などの生物が生きる生態系を守れること、れんげの可愛らしい花によって景観がよくなることなど、人が安心して落ち着いて暮らせるための大きな助けになると確信しています。